あなたが好きなあなたに似たキャラクターのマグカップをたまたま出先で見つけ包装して貰ったあと、駆け込んだ雑貨屋で小さな封筒とカードを買って"今年の夏は楽しかった"と記したら鼻で笑ったあなた
憎まれ口叩きながらもマグカップを使ってくれているあなた
換気扇の下で燻らすわたしのタバコ
あまりにも殺風景な冷蔵庫に冷えた缶ビールたちと豆板醤
都会の片隅でわたしたちは体育座りをしながら缶ビールを覗き込んで世界を見つめても
共に過ごす時、その時だけは、わたしの漠然とした将来への不安を遥か彼方に連れて行くとはあなたには決して言わない
「ずっとこのままがいい」と呟いたコドモのあなたといつも冷静なオトナのあなた
あと、4分で起きなければ遅刻だと分かっていながら横で寝息を立てるあなたの背中を抱きしめ「このまま時が止まればいい」と密かに思い立ち上がる
眠気ナマコで立ち上がり施錠する為にわたしを見送るあなたの唇を塞ぎ、"行ってきます"と呟き背を向けながらいつものように左手をヒラヒラさせドアを開け放ち、階段を駆け下りる最中鍵が締まる音が反響する都会の一棟
何気ない日々の積み重ねでわたしたちは生かされていると思い知り駅の改札を通り抜けた