駆け抜ける

 

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あなたが好きなあなたに似たキャラクターのマグカップをたまたま出先で見つけ包装して貰ったあと、駆け込んだ雑貨屋で小さな封筒とカードを買って"今年の夏は楽しかった"と記したら鼻で笑ったあなた

憎まれ口叩きながらもマグカップを使ってくれているあなた

換気扇の下で燻らすわたしのタバコ

あまりにも殺風景な冷蔵庫に冷えた缶ビールたちと豆板醤

都会の片隅でわたしたちは体育座りをしながら缶ビールを覗き込んで世界を見つめても

共に過ごす時、その時だけは、わたしの漠然とした将来への不安を遥か彼方に連れて行くとはあなたには決して言わない

 

「ずっとこのままがいい」と呟いたコドモのあなたといつも冷静なオトナのあなた

 

 

 


あと、4分で起きなければ遅刻だと分かっていながら横で寝息を立てるあなたの背中を抱きしめ「このまま時が止まればいい」と密かに思い立ち上がる
眠気ナマコで立ち上がり施錠する為にわたしを見送るあなたの唇を塞ぎ、"行ってきます"と呟き背を向けながらいつものように左手をヒラヒラさせドアを開け放ち、階段を駆け下りる最中鍵が締まる音が反響する都会の一棟

何気ない日々の積み重ねでわたしたちは生かされていると思い知り駅の改札を通り抜けた

ゼロになって、ちゃんともがく

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目を覚ますと午前5時、シングルベッドの横で寝息を立てる家主、顔を両手でぴったり覆っていなければ眠れない家主の癖に気づいた早朝。

以前来た時に家主に「タバコを吸うならベランダで吸え」と言われたことを思い出し、アンダーウェア1枚の姿で慣れた手つきで窓を開け都会のビル群に囲まれた東京の朝焼けを眺めながらIQOSで一服。昨夜のテキーラがほんの少し存在を主張する身体に、ほんの少しだけ残る眠気。ぼんやりと怒涛の自分の1ヶ月を振り返っても笑けてくるだけで思い出すのはすぐにやめて、ベッドに再度潜り込む。

物音で目覚めた家主に「お前、体温高えな」と言われ胸骨丙をノックされる。「痩せっぽっちだな」そう家主は続けて言うだろうなと思いながら「子供の頃から眠いとさ、体温高いんだよ」そう家主に答えると「痩せっぽっちだな」と家主は予測通りの言葉を呟き、浮き出た肋骨に触れる。

「不思議な関係性」そんな言葉が脳裏をよぎる。家主と私の関係性を表す言葉ならあまりにも多すぎる。けど、家主と私は肉体的には繋がらない。その欲求が私にはない。家主にドキドキするような熱い想いは湧き上がらない。家主もそのような欲望や想いはないであろう。だから、いつから私が考えている"名前のない関係性"に適任なのは、家主なんだろうなぁとそんなことを考えながら家主のTシャツに顔を埋める。「お前いつも甘えてくるな」と呟き、眠気ナマコで呆れた顔をしてるであろう家主に「ワン」と答えたら、頭を叩かれた。鈍い痛みと丁度良い眠気と安心感で瞼を閉じると、眠りに落ちる瞬間に家主に抱きしめられた気がした。

no title。

「もう無理だよ」何年振りかの何度目かの言葉。

 

 

その度に受け止め方は違う、憎しみあった10年前。「元気でな」と握手をして別れたサザンテラスは7年前。「ありがとう」とちょっと泣いた田端駅は4年前。

 

 

大小は関係なくとも悲しみは抱えることには変わりない。しかしながら受け止め方は変わってきた。階段を登っているのか降りているのか分からない日々の中で「好き」だと言う人、誰かへの強い想いを相談する人、目の前にある生ビール。様々な人たちの、モノたちの中でそう確かにわたしは生きていた、どれが本当?どれが嘘?そんなことはどうでもいい、ただどうなるのかはわからない日常を揺蕩うかの如くわたしは生きている、心で泣いて喚いても。

「人間が本当に覚えていられるものは苦痛の記憶だけかもしれない」

その言葉を否定する生き方を、いまのわたしならば、選択したい。

 

トーキョーと生きる

マリブコーク、テキーラ、総選挙
浮き出てる胸骨丙に感じる感触
今夜は誰だろう
タバコの煙で泣き出した女

鳴り止まないメッセージ
遠巻きで見ている誰か
TVでじっと見るフランス映画
都会の喧騒、これがわたしたちの日常です
何もわからないまま走りだす夜景&夜警
頭の片隅にいる女に中指を立てられたような気がした

 

#散文詩 

hostage

深夜深酒からどうしようもない事実を見つめる。

真っ暗な部屋 遠くの灯台の灯り 波の音 

理性を持ってしまったら負けという遊び。

 

ドキドキはしない、けれど安心感があるよ、

俺はそう思う。お前は?という答え合わせ。

息が上がっても答えは上がらない。

気がつけば駒込駅を発車する山手線、

何が真実何が嘘か分からず

アイスコーヒーを啜る。

36.8度がバレ背に爪を立てられた。

コンクリートジャングルトーキョー

深夜1時過ぎ、終電はとっくに過ぎ去りタクシーで帰ることしか選択肢がないゆったりとした時間に西新宿を歩く。幼少期1番近い都会が新宿だったからか、コンクリートジャングルトーキョーのカオスな街、新宿に強く憧れを抱いてる。品川のタワーマンション?勝どきのタワーマンション?いや、俺は西新宿に住みたい。そう思って生きてきた。

 

そんな中、1人でふと事実を見つめてみる。

 

時差と共にやってくる、気づいた時には、もう元には戻れない感情。何をしていても何をしていなくても湧き上がる感情、分からない、けど、分かっている、もう元には戻れないのだ。私の負けだと白旗を挙げたくても、挙げられず何も言えなくて煌びやかな都会の喧騒から離れる。3km歩いて後部座席から事実を思い返す。どうしようもない、どうしようもない人間だと顔を覆いたくなる、涙はでない、若輩者のくせに強くなったからか年を重ねたからか。

 

 

ただただ事実を受け入れるしか術ないことは分かっている、どこまで流れ行くだろう、ゆらゆら揺れて何処へ流れ着くのだろうか。数時間前の同期の掌が何か教えてくれるような気がした。

古き本開けば

家庭の事情で東京と愛媛を往復する回数がここ最近増えた。何もない田舎、街灯も少なく得体の知れない何かの鳴き声が川辺で反響する夜星が綺麗に見えるのが唯一の楽しみである。そんな滞在生活中、祖父母宅の書斎に私が高校時代に買ったであろう本が1冊あったので手に取った。後半のページから出てきたイギリス留学中に買ったポストカードと、折りたたまれた色褪せたプリント、事前調査、平成22年5月と日付が記されてる、薄っすらと見える黒インクで書かれた文字。身に覚えがなく開いてみる。

 

 

"愛してる。これで満足?"

 

小さな字、だが達筆な字で記された手紙。初恋の人からの手紙だった。どういう経緯で貰ったかは忘れたけど当時を少し思い出してしまった、プラトニックで親密な関係を築いた17歳の夏を思い出す。当時から常に強気で芯がしっかりしてる先輩で風の噂では自分の夢を叶えるべく異国の地で1人闘ってるそうだ。彼女と過ごした短い時間のお陰で今自分が執筆してる論文が存在してるし、進路も途中ぶれたけど振り出しに戻ってもう一度自分がやりたいことをやれる環境を手に入れることができた。確かに存在してた時間と経験のお陰で私は確実に成長できたであろう。あの頃に比べたら今はほんの少しは素直になれるようになったよ、身長6cm伸びたよ、しんどいこともあるけど確かに生きてるよ。

 

私は小さな手紙をゴミ箱に捨てた

「いつかもう一度君と出会いたいな、他人で。 」そんなことを思いながら、7年という歳月を経て吹っ切れた私が顔を出したのだろう。f:id:iamjin:20161203120650j:image

そろそろまた1年が終わる。