憎たらしさに呆れ

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「仕事行きたくない」
突然俺の上に乗った女は困った顔で駄々をこねる子どものようなことを言い始めた。これがお互い裸であったら官能的なワンシーン間違いなしだが、残念ながら違う。お互い着衣のままである。年季が入っているからか沈みがちなベッドに横たわったままの身体に力を入れ上半身を起こした俺は上に乗る女を少しズラして胡座の上に女を鎮座させ抱き寄せた。「どうした?」と寝起きで微かに開いた目で伏し目がちな女の顔を覗き込む。"大丈夫?"とは言わない、見ていれば"大丈夫"ではないのは分かるから。いつも冷静な女のことだから"大丈夫"とはぐらかして「そいや、北朝鮮のミサイル問題どうなるんだろうね?会社に落ちてくれないかな」と話題転換をするとわかっていたから。何も言わないで愚図って泣きそうな顔をしたこの女がとても愛おしく感じて「大丈夫だよ」と形勢逆転させる。いつも御主人様の後ろをタッタと歩く犬ようにこの女に尻尾をバッサバッサ振っているから、この瞬間だけは俺の勝ち。そう思ったのは次の日だった。