まんのう公園の夜明け

 

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目が覚めるとトタン屋根がけたたましく音を立てていた。

土砂降りなことは分かっていた、昨日家を出る前に天気予報をチェックした際降水確率100%だったからだ。

枕元に置いていたスマートフォンに手を伸ばし時刻を確認する、AM4時53分

眠りに落ちる前に連絡を取っていた人からのメッセージを見て22時40分には確実に眠りに落ちていたことが分かった。

逃亡生活を始め2日目にしてようやく私は数ヶ月ぶりにスッと眠りに落ちることができた。

「この土砂降りだと行動範囲が狭まれる。どうしよう」

そう思いながら枕元のタバコに手を伸ばす。

車社会の田舎町で車を持たない私の足は、いくら旅慣れしているとしても限界はある。

レンタカーを借りることを思い立ったが、ペーパードライバーで1年近く運転していないので止めといたほうがいいだろう。

さて、どうしたものかと思いながら眼を瞑る、

自然と以前のように日常生活、仕事については考えなくなったことに気づいたのはずいぶん後になってからだった。

ようやくモノを書くアイデアではなく、モノを書くという行動力が湧いたことに気がついた。

 

この場所でこのまま数ヶ月滞在するのもいいかもしれない、だがしかし、私はコンクリートジャングルでしか生きてこなかったからな…

なんて馬鹿なことを思い、確かに私は高揚感を抱いていた、窓の外では自転車が走る音が聞こえていた。

 

 


目が覚めると、太陽光が容赦なく私の顔面を直撃していた。思わず飛び起き雨戸を開けると明け方の土砂降りが嘘のように晴れていたのだった。

行動範囲が広まったことに歓びを感じササッと身支度を済まして、バックパックの中身の大半を置いて財布とMacBookをぶち込み駅まで歩く、徒歩20分くらいか

降水確率100%から目が痛いくらい晴れた青空の路で適度に汗を流す、自然とイヤフォンから流れる曲も明るいものを選びがちだ。

ゴーストタウンのような駅前商店街を駆け抜けついた先は勿論、Suicaなどどころか自動改札もない駅である、

駅員はいるが確か夜20時以降は無人駅で、

窓口にプラスチック製のザルが置かれ手書きで「切符はこちらに」だなんてメモがペッと貼られていた気がする。

信頼でなりたっている町である。

時間の選択を間違え特急電車は2時間後なので1両編成のワンマン列車に乗り込む、片道50キロの2時間旅を選択、だがしかし運賃は半分。

田舎のワンマン列車(車内アナウンスがワンマン”電車”ではなく”列車”と言っているので以降”列車”と呼ぶ)の乗客は

学ランを着た野球部でしかない背が高い体格の良い爽やかな学生

競馬新聞を熟読しブツブツ独り言を呟くおじいさん、インスタグラムあたりでキャッキャしてる若いカップル

自転車を持つフランス語を話す旅行客、全身ディーゼルの中高生

私はきっと列車で、全身黒でやけにステッカーがベタベタ貼られたPCをカタカタしてる異質な人物と認識を受けていそうだ。

 

車窓は瀬戸内海から田園風景に変わった。現地の人は「同じ風景ばかりでつまらない」と思うのだろうか

トーキョーの車窓もつまらない、同じような形をしたマンション、ビル、コンビニ、まぁもうなんでもいいや。

 

足元の暖房が私の足をジワジワと焼き、

隣のおじいさんはブツブツこの馬は…と

楽しそうに独り言を呟いている。

 

久しぶりに熱心にカタカタと文字を入力するのに疲れ再び乗客たちに目を向けると、殆どが見ている視線は同じだった、車窓である。

車窓風景は再び瀬戸内の海に戻った。

造船所だらけの瀬戸内の海を皆見ているのだった。窓際の席の人は曇った窓を指で拭いボッーと海を見ている。

 

生命体は海から生まれた。という子供のころに学んだことを思い出す。帰省本能か…人間は海に魅せられるのか…そもそも今回の旅を思い立った理由は海が見たいと思ったからだっけ…そんなことを思いながら列車は私が下車する駅に到着した。明け方の土砂降りが嘘のように晴れた海の近くの小さな駅は潮の香りがした。

 

目的地まであと3駅。